広葉樹はなぜ紅葉するのか?
晩秋になると樹々は気温の低下を察知し、根が水分の吸い上げを制限し始める。更に、葉と枝の接続部にある「離層」と云う、水道の栓の様な機能を持つ組織が、枝葉への水分の補給を止めてしまう。
葉は太陽の光を受け、空気中の二酸化炭素(CO2)を基に「葉緑素」を作り、樹木の幹へ養分を供給している。所謂、光合成を行っている。その葉緑素は行き場がなくなり、糖分として枝葉に残留する。葉に残った糖分が、紅や黄色に変色して紅葉すると云う訳である。紅くなるのはアントシアン、黄色くなるのは、カロチノイドを含んだ葉である。
やがて葉は、風に吹かれて落葉となり、大地の栄養分として肥沃な土を作り、豊かな緑を育て、それを昆虫が食べ、昆虫を鳥が食べ、鳥は植物の種を大地にばら撒き、その鳥も動物等に食べられたりし、動物は、尿や糞あるいは自分自身の死骸を地球に戻し、樹々の栄養分となる。見事な食物連鎖の世界が構築されている。
太陽と、地球の光と水と空気の相関関係を考えれば、生物多様性が如何に大切であるか。また、人間目線をやめ、自然の摂理に真摯に眼を向る事が、如何に望ましい事であるかが理解出来ると思われる。
(社)東京都山岳連盟自然保護委員
(社)日本山岳協会自然保護指導員
徳永邦光