奥多摩小屋の状況 2019.10.29調査の報告 

2019.10.26~27に、台風19号の爪痕が色濃く残る奥多摩へ行ってきました。
奥多摩の登山道は未だ通行止め、通行注意箇所が多々あり、当初予定していた稲村岩尾根ルートが使えないため鴨沢から入山した。七ツ石山からブナ坂の巻き道も閉鎖のため、マムシ岩からまず七ツ石小屋に向かい、更に千本ツツジへの分岐に荷をデポして、七ツ石山、ブナ坂へ。奥多摩小屋を往復し、鷹ノ巣避難小屋に宿泊、翌朝石尾根を奥多摩町に下山ました。
奥多摩小屋が閉鎖されてから7か月近くを経過し、無住状態で老朽化した建屋が台風に耐えられたか心配されたが、小屋は外から見る限りダメージを受けた様子はなく、また今期奥多摩町で予算化された解体作業は全く進んでいない様子だった。
違法に張られたテントもなく、閉鎖されたことは広く行き渡っているようである。しかし、テント場から水場に下りるルート上には倒木が通路を塞ぎ、通行に難渋した。
また、水場は崩れて体をなさず、斜面を流れ下る大量の雨水が滝のように水場の落ち口に直接注いでいた。この水が飲料に適するかどうかは調査が必要と思う。
p20191026mizuba.jpg p20191026stopnippara.jpg
小屋から鷹ノ巣避七ツ石山に登り返し、鷹ノ巣難小屋までは石尾根巻き道を利用した。登山道には折れた小枝が目についたものの、通行に全く支障はなかった。
鷹ノ巣避難小屋は奥多摩小屋閉鎖の影響か、予想に反し大賑わい。小屋宿泊者は16名で、我々パーティーのうち3名は土間に寝た程。小屋利用者意外にも、テントを張るパーティもあった。
翌朝、鷹ノ巣山へ。薄曇りではあったが十分に展望を楽しみ、更に六ツ石山を越え、奥多摩町まで石尾根を下った。途中、エスケープルートとなる三ノ木戸山分岐から先の林道は通行止めとなっているが、石尾根ルートには特に問題箇所はなかった。
奥多摩町は断水が続いていた。駅前の飲食街もやっと26日から営業を再開した店舗が多いとのことであるが、まだまだ給水車に頼った生活が続いている集落もある。
完全な復旧は未だ遠いとの印象を受けた山行であった。
小高 記
写真:雨水が流れる水場跡、日原街道を廻避する看板

山の農学-「山の日」から考える(日本農学会シンポジウム)10月8日

日本農学会シンポジウムの案内が都岳連に届いています。

統一テーマは、山の農学―「山の日」から考える

日時: 平成28年10月8日(土) 午前10時より (9時30分開場)
会場: 東京大学弥生講堂・一条ホール

主催:日本農学会

詳細は次のURLでご確認ください。
http://www.ajass.jp/symposium.html

御前山通信(2014/12)

12月23日、2014年最後の水質調査を自然保護委員会委員3名、自然保護指導員1名で行いました。
年の瀬も押し詰まっているためか見かけた登山客も数名、マイナスの気温を記録する冬枯れの静かな登山道を、トチノキ広場~活動の広場~上流~湧水~避難小屋~カラマツの広場と、観察しながら回りました。
トチノキ広場からわさび田の広場を経て活動の広場へ通じるアスファルト歩道は、梅雨時の苔むした折りや冬季の雪や霜が解けて凍った時など、つるつるでヒヤリハットすることが度々ありましたが、やはり滑って怪我をするハイカーが絶えなかったとのこと。この度、東京都により歩道に滑り止め加工が施されました。道の中央部をレンガ色の帯が走ります。トラック競技場を連想させ景観的には違和感のある色味と感じました。また、厳しい自然条件の中でどれほどの効果があるのか疑問もあるところですが、今後の推移を見守りましょう。
今月もシロヤシオの道沿い、湧水の手前、カラマツの広場付近のシバグリの木に新旧含めて20個程のクマ棚を確認しましたが、湧水のセンサーカメラは湧水もヌタ場も凍り付いたためかメスジカを1頭捉えるのに留まりました。避難小屋の水は絶えることもなく流れており、動物たちが水場を避難小屋水場に移動させた可能性もあることから、来年度は避難小屋水場にもカメラを設置したいと思っています。
水質の測定値は、湧水のCODが8と相変わらず高かったものの、それ以外はいつも高めの値を記録していた上流のCODや伝導率を含め、落ち着いた数値でした。湧水は今月も水の採取が困難で、氷の割れ目から水たまりの上澄みを採取して検査しました。
3月から10か月に渡って行ってきた御前山の水質調査ですが、水場の凍結により検水の採取が困難となるため一旦休みます。来年3月再会予定です。引き続き自然保護指導員の皆様のご協力をお願い致します。
記事:小高

御前山通信(2014/11)

p20141125-20141122kumadana.jpg11月22日、快晴無風の穏やかな日和の中、委員4名で恒例の水質調査が行われました。境橋バス停へ下山する数組の登山客とすれ違う程度の静かな連休の初日、奥多摩都民の森(体験の森)活動の広場~上流~湧水~避難小屋~カラマツの広場を観察しながら回りました。紅葉は終わっている所と、まさに今色づいている所とが斑で、避難小屋の前には20日の降雪の名残りも見られ、確実な季節の移ろいが感じられました。
シロヤシオの登山道沿い、湧水の手前、避難小屋至近、カラマツの広場のシバグリの木に新旧含めて12本のクマ棚を確認ました。これまで小屋や登山道近くでクマ棚を見かけたことはなかったので驚きました。
湧水のセンサーカメラはニホンジカのメスやオス、イノシシの親子に加え、何度もクマの姿を捉えています。冬を前に活発に活動をしている様子で注意が必要です。
水質の測定値は、CODが駐車場以外依然として高い数値が継続しており、上流では伝導率の値も高く、これらは毎月ほぼ同じ傾向です。湧水では今月も水の採取が困難で、水たまりの上澄みを採取して検査しました。
避難小屋の屋根には風向・風力等を計測するためか、計測機器が設置されていました。
記事:小高

御前山通信(2014/7)

7月27日、自然保護委員会の委員4名で恒例の水質調査に御前山に行ってきました。
午後から雷雨との予報が出ていたので、通常よりスタート時間を早め、8時に五日市駅を出発。先月の調査の際には落石で通行止めとなっていた梅ケ谷峠の道も修復が終わり通行可で、体験の森へ車を進めた。栃寄森の家からカラマツの広場~湧水間で熊の目撃情報多発との情報を頂く。気が引き締まる。
セミの声は喧しく、一面を深い緑が覆う中ギンバイソウの群落がほの暗い森のアクセントとなっている盛夏ではあるが、ワサビ田の広場から活動の広場へ通じる登山道、カツラの大木からカラマツの広場への道、湧水の広場から避難小屋への登山道といった水質調査のコ-ス上の法面に、1m程の高さまで土が露出している帯が散見された。よく見るとシカと思われる足跡多数。周辺のクサを食べ尽くしたのだろうか。以降の調査時にも観察を続けたい。
湧水は先月同様ほとんど流量なし。ヌタ場はここ数日の豪雨もあって十分の水を湛えていて、オタマジャクシの黒い大きな塊がいくつも浮いている。水パイプが詰まっている可能性もあるかと、事務所に状況を報告した。
センサーカメラは、今月もヌタ場で多くの動物を捕らえていた。特にシカの出現するコースに、ある程度の規則性が見られることが興味深い。
水質はどのポイントでもCODの値が高めであった。
記事:小高

巻機山景観保全ボランティア2014 募集のご紹介

巻機山景観保全ボランティア2014 募集のご紹介
夏の活動 8月23日(土)~25日(月)
主催:巻機山景観保全ボランティアーズ
対象:一般の皆さん、自然保護指導員
詳しくは、巻機山景観保全ボランティアーズのHPをご覧下さい。
http://makihatavolunteers.asablo.jp/blog/
都岳連自然保護委員会のメンバーも参加予定です。
参加を検討されている方は、→巻機山景観保全ボランティアーズのHPから申し込むか、お問い合わせとご連絡のページからお問い合わせください。
岡田

御前山の登山道も台風18号の影響が大きかった

p20131106gozenymstop.jpg2013/10/06の御前山での水質調査時に,登山道を閉鎖したとの表示がありました。栃寄の林道に入るとまもなく「こちらから御前山には入山できません」と書かれた大きな立看を確認しました。その後、11月の調査時にはほとんど復旧していました。

体験の森事務所によると、先日の台風18号の影響で体験の森は壊滅的な被害を受け、崩壊した登山道、なぎ倒されたような倒木(300本以上とか…)が随所にあり、御前山に続く全ての登山道を閉鎖したとのことです。

小高:記、写真:宮崎

奥多摩の山域での通行止めなどの登山道の最新の情報は奥多摩ビジターセンタでご確認下さい。
http://www.okutama-vc.com/登山道-道路状況一覧/
奥多摩ビジターセンターの登山道-道路状況一覧

なお,御前山の登山道の閉鎖の情報は,2013年9月29日に佐々木自然保護指導員からもフィールドレポートで報告されています。

巻機山景観保全活動 2013年のご紹介です

新潟県と群馬県の境に位置する巻機山でおこなわれている、景観保全の山岳ボランティア活動です。
主催:巻機山景観保全ボランティアーズ

1)夏季活動 8月24日(土)~27日(火)
2)秋季活動 9月16日(月)~18日(水)

内容と参加方法などは次のWebページをご覧下さい。
→ 巻機山景観保全ボランティアーズ OFFICIAL WEB SITE

 

広葉樹はなぜ紅葉するのか?

広葉樹はなぜ紅葉するのか?
晩秋になると樹々は気温の低下を察知し、根が水分の吸い上げを制限し始める。更に、葉と枝の接続部にある「離層」と云う、水道の栓の様な機能を持つ組織が、枝葉への水分の補給を止めてしまう。
葉は太陽の光を受け、空気中の二酸化炭素(CO2)を基に「葉緑素」を作り、樹木の幹へ養分を供給している。所謂、光合成を行っている。その葉緑素は行き場がなくなり、糖分として枝葉に残留する。葉に残った糖分が、紅や黄色に変色して紅葉すると云う訳である。紅くなるのはアントシアン、黄色くなるのは、カロチノイドを含んだ葉である。

やがて葉は、風に吹かれて落葉となり、大地の栄養分として肥沃な土を作り、豊かな緑を育て、それを昆虫が食べ、昆虫を鳥が食べ、鳥は植物の種を大地にばら撒き、その鳥も動物等に食べられたりし、動物は、尿や糞あるいは自分自身の死骸を地球に戻し、樹々の栄養分となる。見事な食物連鎖の世界が構築されている。
太陽と、地球の光と水と空気の相関関係を考えれば、生物多様性が如何に大切であるか。また、人間目線をやめ、自然の摂理に真摯に眼を向る事が、如何に望ましい事であるかが理解出来ると思われる。

(社)東京都山岳連盟自然保護委員
(社)日本山岳協会自然保護指導員
徳永邦光

山を楽しむ :委員のつぶやきコラム

近頃は、山の楽しみ方、活動の仕方などが多様になっています。
歩く、走る、足で、自転車で。完全に遠慮して欲しいオートバイ、私は危険な目にあいました。

健康ブームの影響でしょうか、山を足で走る人が特に増えています。マナーを守り、一般登山者に迷惑をかけたり、危険を感じさせないで大自然を堪能できればと思います。狭い登山道は通過に注意する場所もあり、団体での競技走行は特に注意が必要ですね。

狭い登山道での譲り合い、挨拶などが自然体で行われ、都会でゴミのポイ捨てを平気でしている人も山ではしていないなど、自然の中に入ると、人々の心も和やかで、純真になるのでしょう。
都会や近郊でも開発、相続税、車庫建設などで樹木が少なくなっています。樹木の有る所では、心のゆとりが出てくるように感じます。
緑を増やし自然と人との共存を大切に。

森谷博史

大気汚染の指標生物、ウメノキゴケ :委員のつぶやきコラム

p20110930umenokigoke.jpg  最近、山に入るまでのアプローチで楽しみにしていることがある。農家の庭先にある梅の木や登山口あたりにある桜の幹を見ながら歩くのだ。幹に環境指標生物のウメノキゴケが着生していると、ああここは二酸化硫黄濃度が低いんだと、心が安らかになって思わず深呼吸したりする。
 ウメノキゴケは葉状地衣類の一種で必要な水分や養分を雨や霧、露などの空気に含まれる水分や無機物から吸収している。そのために、大気中の汚染物質の影響をモロに受けるので汚染濃度の高い市街地などでは見られない。
 今年7月に中央沿線の百蔵山(1003m)に登ったが、狭い山頂のど真ん中にある桜の幹のあちこちに、灰緑色の葉状体を発見した時は単純に「近くていい山」を実感したものである。

宮崎 仁一郎

写真: 百蔵山山頂の桜の幹に着生するウメノキゴケ

大陸移動説 :委員のつぶやきコラム

 今から丁度100年前の1912年、ドイツのヴェゲナーが南北アメリカ大陸の東海岸線と北欧~アフリカ南端までの西海岸線がピッタリ合う事から大陸が割れて移動したと発表した。しかし、地質学者が取り合わなかった。
 その後、彼は証明のためグリーンランドに行き過労死。一時この学説は立ち消えた大戦後、地磁気の研究で大陸が移動したと考えないと証明できず、東日本大震災でもわかるようにプレート説が浮上、確たるものとなった。これにより大地震予知研究等が大きく進んだ事は確かだ。
 ヴェゲナーのように広い視野に立って、多くの知識を会得し、新しい発想で自然を見つめ直す時代が来ているのではないだろうか?

藤井謙昌

山を走る :委員のつぶやきコラム

最近、一般道を走る市民マラソンは異常なほどの盛り上がりである。トレールランニングも市民権を得つつある。辞書には「森林・原野・山地などにコースを設定して、走破するタイムを競う耐久レース。トレラン。」とある。
都岳連が主催するハセツネCUPも大変な人気。自然保護委員会では自然保護の観点、安全性、登山道占拠などからトレランには厳しい目を向けている。
ならば一度走ってみようと、いざ高尾山方面へ。山の楽しみと走る楽しみ、両方味わえた。
少人数でかつ自然や人を思いやる心を持ち、マナーを守り安全を確保できれば、スポーツとして認めてもいいのでは。大人数で駆け抜けるレースとはやや違う。みんなの宝、山を大いに考えさせられた。
福田博明

巻機山景観保全ボランティア2011のご紹介

巻機山景観保全ボランティアーズが主催する、2011年の巻機山の景観保全活動についてご紹介します。
p20100822ishoku.jpg日本の山でのオーバーユース(過剰利用)、特に高山帯のお花畑、草原、湿原など弱い植生での踏みつけによる裸地化が深刻になっています。
上越国境の巻機山でも例外ではなく、膨大な降雪により形成された雪田草原が破壊されていました。しかし、巻機山では30年に及ぶ景観保全活動の取り組みが行われ、徐々に回復が進んでいます。
この活動について、都岳連自然保護委員会のメンバーも少なからず参加し、応援してきました。
巻機山の美しい景観を取り戻すために、是非、ご参加ください。約2000mの山での活動で大変ですが、一度は体験されることをおすすめします。
2011年、夏と秋の景観保全活動日程は次の通りです。
1.夏季活動
 8月20日(土)~23日(火)
2.秋季活動
 9月16日(金)~17日(土)
●詳細、申し込みはこちらへ
→巻機山景観保全ボランティアーズ
投稿:岡田

いのちを守る森づくり :委員のつぶやきコラム

 山を登りながら、漠然と自然保護や保全について考え、森林の勉強をしてみたいと思い始めた頃、「3000万本の木を植えた男」という植物学者の宮脇昭先生を知った。昔からあった土地固有の植生を割りだし、その土地に最適な木『潜在自然植生』を植える活動を国内外で続け、83歳の今も現場で活動をする「植樹の神様」といわれる凄い人である。
 その先生が、東日本大震災の未曾有の被害状況を見て、森の防潮堤づくりの提言をした。有害物質等を取り除いた瓦礫を土と混ぜて盛土をつくり、その上に潜在自然植生の植樹をする。
 人間の力ではとても太刀打ちできない自然の驚異。被災地にあふれる瓦礫の山を未来につながる「いのちを守る森」へ。自然との共生の在り方を問うこの壮大なプロジェクトを応援したいと思った。

はせがわ 

参考: 宮脇 昭「がれきを森へ・・・ 命を守るプロジェクト」
http://www.youtube.com/watch?v=SHCqz_lHL0Q&feature=related